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木について考えること

ギターについて考えることは、必然的に木のことを考えることに繋がります。「Team Takamine」のメンバーからも紹介されているように、近年実に様々な木がギターに使われています。 

弊社工場は岐阜県の木曽山中、中山道沿いにあり、周りはすべて木曽の山々と木曽川が作り上げた谷間というシチュエイションで、目の前の高峰山にも緑の木々が豊かに茂り、昔より林業も盛んで木曽ヒノキの産地でもあります。しかしながら、工場見学者に説明する際にも良く驚かれるのですが、ギターに(少なくとも弊社で)使用されている木材はすべて外国産であり、国内、もしくは木曽山中から持ち込まれたものは一つもありません。国内産の木材を使用して楽器を作るという試みや実践をしている方もいらっしゃいますが、外国産の部材と比べると、国内の木の多くは直径も小さく、比重が重いことなど、ギターにとっては向かないものが多く、製品化は難しいようです。 

弊社坂下工場で作られるギターの主たる材料は、北米産針葉樹で表板に使用するスプルースや米杉(アメリカン・レッドシダー)、側板、裏板を初めネックや、指板や駒などに使用する広葉樹系の南洋材で、インディアン・ローズウッドやマホガニーを筆頭にハードウッドとも呼ばれるハワイアン・コアウッドやシカモア、オバンコールなど、アメリカ、カナダ、ハワイ、インド、アフリカなど世界の様々な国から輸入しています。大陸の大自然の中で、長い年月を経てすくすくとまっすぐに大きく育った木からギターが作られています。もちろん中には育ちの悪いものもあります。木目が良くなかったり、ひねっていたり。想定よりも速い速度で縮んでしまったり、反ってしまたり。育まれていた環境と歴史や経緯が違うものを組み合わせてゆく作業においては、様々な自然の側面を見ることも経験してきました。先達たちが、自然との葛藤と経験を重ね、克服し、ときには自然環境や木と折り合う中でギターが作られてきました。かといって森林が減少し、先々の材料の確保も危ぶまれ始めた現在において、少しばかり木目が美しくないとかいうことだけで、捨てたり無駄にしたりはできません。 

自然保護や環境問題の観点から、ギターや楽器に使用する木材への規制も厳しくなってきています。一般的によく知られているものでは、ブラジル産ローズウッド(通称ジャカランダ)や、ホンジュラス産ローズウッドなど、ワシントン条約に指定され,伐採はもとより、証明書(CITES)と許可がなければ輸出入や取引の出来ないものもあります。ハワイアン・コアも近年許可なく伐採ができず、森林への侵入も規制が厳しくなっていて、すでに伐採されたものか、倒木の切り株や、根っこの部分から切り出されます。表板に使用されている米国産のスプルースやシダーにおいても、森林の奥深くから、倒木を運び出し製材されていると聞いています。もちろんこうした規制は絶滅危惧種や自然保護の観点から必要な対策であり、逆に希少価値という面からフリークやマニアから珍重されることにもなっているわけです。

地球温暖化や環境保護問題が大きく取り沙汰されるようになってきた近年、こうした規制は強まる一方で、アメリカでは、今年の4月より「LACEY ACT」という法律が施行され、木材の種族、産地、使用量が正しく証明、申請されていないものは、楽器、ギターも含めアメリカ国内には輸入し、販売できなくなるということで、業界にとってはますます厳しい環境下になりつつあります。南洋材の多くは、使用されている材料が、違法なものであるかないか、倒木であるかないかなどは不明な点が多いため、原産地及び取引した業者や、製材した業者まで遡り証明しなさいというものです。しかしながら原産国の経済状況や、文化的側面を考えると、これを規制することは難しい問題です。 

アフリカにおける木材の乱伐による環境破壊もまた大きな問題となっていますが、燃料として生きてゆくために木を切る、木を切って売ることで生計を建ることは、彼らにとっては必然であることも現状なのです。日本における捕鯨の問題と同じように彼らには死活問題です。 これはバランスの問題であるけれども、すでに地球における環境のバランスは大きく崩れ、破壊されてしまっていることも事実です。この崩れてゆくバランスを少しでも食い止め、今から取り戻すことが将来の地球にとって必要なことであることも理解できることです。

こうした問題に様々な議論や活動も行われています。ケニア出身のワンガリマータイさんが始めた非政府組織(NGO)による植樹活動「グリーンベルト運動」を初め、日本でも植林プロジェクトなどが盛んになってきています。そのマータイさんが、日本に来て「もったいない」という言葉に感動されたといいます。自然やものに感謝し、大事にし、無駄にしないという日本人の意識。自然のもの、生きものを、食として感謝して頂く、「いただきます」にも通じるものがあります。 

アコースティック・ギターは、木から作られています。自然の木から生まれているからこそ、暖かく、人々の琴線に触れ、心を癒してくれるのだと思います。自然の恵みである木を頂き、ギターを作り、生かされているということを感謝すると共に、木を大切に、自然を大切にすることを今一度心に戒めて、ギター作りと同時に自然を守ることは、私たちにとって義務であり、責務であると考えています。

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